【税制・社会保険】「年収の壁」はどうなる?178万円への引き上げと、社会保険ルールの最新実務

皆さま、こんにちは。
塙公認会計士事務所の塙 健一郎です。

新年度がスタートして数週間が経ちました。
経営者の皆さまは、今年度の事業計画に向けて、どのようなスタートダッシュを切られたでしょうか。

新しい計画が動き出すこの時期こそ、従業員の方々との「対話」を深める絶好のタイミング。

日々の声に耳を傾けていると、「もっと会社に貢献したい、長く働きたいけれど、税金や保険の壁があってシフトを増やせない」というパートやアルバイトの方の悩みに直面し、もどかしさを感じることも多いのではないでしょうか。

今回は、現場のジレンマを解消する大きな一歩となる令和8年度(2026年度)税制改正の「178万円の壁」対策と、小規模企業にも確実な影響を及ぼす「社会保険の壁」の実務ポイントについてです。

178万円への引き上げと、小規模企業が備えるべき社会保険ルール

(※本記事の情報は、2026年4月19日時点の関連省庁の公表情報に基づくものです。
実務適用の際は必ず最新情報をご確認ください。)

かねてより大きな話題となっていた「年収の壁」ですが、ついに今年、2026年(令和8年)分の所得から、所得税の非課税枠が「178万円」へと引き上げられました。

しかし、経営者や人事労務担当者の皆さまが実務を行う上で、「いつから、どう処理すればいいのか?」そして「社会保険の壁はどうなるのか?」について、正確に把握しておく必要があります。

特に小規模企業が見落としがちなポイントを3つに整理しました。

① 【税制の壁】178万円枠の適用タイミングに注意!

基礎控除と給与所得控除の引き上げにより、所得税がかからないラインが178万円になりました。
しかし、今年の「毎月の給与計算」が変わるわけではありません。

  • 2026年(今年)の実務:1月〜12月までの月々の源泉徴収税額は「従来のまま(変更なし)」で計算します。そして、今年12月の年末調整で新制度(178万円枠)を用いて精算し、多く引かれていた分が還付される仕組みです。
  • 2027年(来年)の実務:来年1月1日以降の給与支払いから、月々の源泉徴収に新しい税額表が適用されます。

② 小規模企業こそ要注意!「社会保険の壁」への対応

「税金がかからないならシフトを増やそう」と安易に動く前に、必ずチェックしていただきたいのが「社会保険の壁」です。
小規模企業において、ここは現在進行形で非常に大きな転換点を迎えています。

  • 【130万円の壁】扶養認定ルールが緩和されました(2026年4月1日〜)
    従業員50人以下の企業にお勤めの方にとって、メインとなる壁は現在も「130万円」です。
    金額自体は130万円のままですが、この4月から扶養認定の基準が「労働契約書の内容」ベースへと明確化されました。
    一時的な残業等で突発的に収入が増えても、直ちに扶養を外れるリスクが減り、より安心して働ける環境が整いつつあります。
  • 【106万円の壁】「うちは関係ない」は危険!全企業への適用拡大が法律で確定しています
    「うちは従業員50人以下だから、106万円の壁(社会保険の適用拡大)は関係ない」と思っていませんか?
    実は、最低賃金の上昇に伴い今年の10月を目処に賃金要件(月額8.8万円)が撤廃される見込みです。
    さらに重要なのは、これまで51人以上の企業に限定されていた「企業規模要件」の段階的撤廃が、すでに法律で決定しているという事実です。
    来年(2027年)10月から順次対象が広がり、最終的に2035年10月には「従業員10人以下のすべての企業」へ社会保険の加入義務が拡大することが確定しています。
    つまり、「いつか来る可能性」ではなく「確実に来る義務」なのです。

③ 今すぐ小規模企業が取るべき3つのアクション

これらの法改正を踏まえ、混乱を防ぎ、従業員の働きやすさを守るために以下の準備を進めましょう。

  1. 「新しい前提」での従業員との対話
    「税金は178万円までかからない(今年は年末調整で精算される)」
    「社会保険の130万円ルールは緩和されたが、将来的にすべての小規模企業に加入義務が拡大することが法律で決まっている」
    という事実を基に、パート・アルバイトの方と1on1を実施してみてください。
    「今年、そして数年後どう働きたいか」を一緒に考える姿勢が、強い信頼関係を生みます。
  2. 給与計算システムのアップデートとベンダー確認
    「今年の月次源泉徴収は従来通り」「年末調整で新枠を適用」という変則的なスケジュールに、自社の給与ソフトがどう対応するか、今のうちから案内を確認しておきましょう。
  3. 将来の「社会保険適用拡大」を見据えた人事戦略
    確実に来る社会保険の加入対象者増加を見越し、今のうちから加入を前提とした時給アップや正社員登用など、人材定着のための制度再設計を検討しましょう。


【編集後記】

「税制や社会保険が変わる」、しかも「いずれうちのような小さな会社にも加入義務が来る」と聞くと、対応に追われて負担に感じてしまうこともありますよね。

しかし、今回の大きな変革は、見方を変えれば「意欲ある人材に、もっと活躍してもらうための大チャンス」でもあります。

制度を正しく理解し、従業員の皆さんとしっかり対話することで、より強くて温かい組織・チームへと成長できるはずです。

「うちの会社の場合は、具体的にどうシフトや雇用契約を見直せばいいの?」
「給与計算の設定がこれで合っているか不安で…」

といったお悩みがあれば、一人で抱え込まず、いつでも私たち塙公認会計士事務所にご相談ください。

経営者の皆さまが安心して本業に専念し、会社をより良くしていけるよう、私たちがしっかりと伴走しサポートさせていただきます。

引き続き、前を向いて進んでいきましょう!