心のコストを含めた借入戦略
こんにちは。公認会計士の塙 健一郎です。
12月も半ばに入り、街路樹もすっかり冬の装いです。
皆様、体調など崩されていませんでしょうか。
さて、最近の経営者の皆さんとお話ししていると、
ニュースで流れる「金利」の話題になることが増えました。
「これから金利はもっと上がるの?」
「借入の返済が増えるのが怖い」
そんな不安の声をよく耳にします。
経営者にとって、資金繰りの不安は最大のストレス要因です。
今日は、「数字の損得」だけでなく、心の面から
「経営者の心を守るためのファイナンス戦略」
についてお話ししたいと思います。
損得勘定よりも「心の平穏」を優先していい理由
日銀の政策転換により、日本も本格的な「金利のある世界」に突入しました。
これまでは「少しでも金利が低い方(=変動金利)」を選ぶのがセオリーでしたが、
これからの局面では、その選び方が経営者のメンタルを削ってしまう可能性があります。
もし今、皆様が「今後の金利上昇が不安で、本業に集中できない」と感じているなら、以下の視点を取り入れてみてください。
1. 変動金利と固定金利の差額は「安心料」
確かに、目先の金利だけを見れば、固定金利の方が変動金利よりも高く設定されています。
しかし、その差額を「将来の金利変動リスクを負わなくて済むための保険料」と考えてみてはいかがでしょうか?
- 変動金利: コストは安く見えるが、将来上がるかもしれないという「不確実性(ストレス)」を負う。
- 固定金利: コストは高いが、返済額が確定し「見通し(安心)」を買える。
経営において、「将来のコストが確定している」ことの価値は計り知れません。
差額を支払うことで、金利ニュースに一喜一憂する時間を買い取り、そのエネルギーを売上アップや人材育成に使えるとしたら、
それは決して高いコストではないはずです。
2. 「半分固定」というミックス戦略
金融戦略に、0か100かの正解はありません。
不安であれば、リスクを半分にするという手があります。
- 借入総額の半分を固定金利に借り換える
- 返済期間が長いもの(長期資金)だけを固定にする
こうすることで、「金利が上がっても影響は半分」という心の逃げ道を作ることができます。
これだけでも、心理的な負担は驚くほど軽くなります。
3. 「制度融資」という強力な防波堤
ここで、皆様の「安心」を支える具体的なツールとして、自治体の「制度融資」をご紹介します。
これは、東京都や区が銀行との間に入り、金利の一部を負担(利子補給)したり、保証料を補助してくれたりする仕組みです。
例えば、文京区・千代田区周辺の事業者様にとって、以下の制度は「金利上昇時のシェルター」になり得ます。
| 制度名 | 特徴とメリット | 対象の目安 |
| 東京都制度融資 | 【規模が大きい】 融資限度額が大きく、設備投資や長期の運転資金に向いています。固定金利メニューも選べるため、将来の支払い額を確定させたい場合に最適です。 | 都内で1年以上事業を営む中小企業者など |
| 文京区中小企業あっせん融資 | 【手厚い利子補給】 区が支払利息の一部を負担してくれるため、「本人負担利率」が0.2%〜0.4%程度(※条件による)と極めて低く抑えられるケースがあります。実質的な固定低金利を実現できます。 | 文京区内に主たる事業所がある方 |
| 千代田区商工業融資 | 【保証料補助もあり】 利子補給に加え、信用保証料の補助も手厚いのが特徴です。初期コストとランニングコストの両方を抑え、資金繰りの予測を立てやすくします。 | 千代田区内に事業実態がある方 |
※各制度には公募期間や細かい要件があります。最新の利率や枠については、必ず区のホームページか当事務所へご確認ください。
こうした公的制度を活用することで、「市場金利は上がっているが、自社の支払利息は守られている」という状況を作ることができます。
これこそが、枕を高くして眠るための「賢い守り」です。
経営者の皆様は、船長のような存在です。
嵐(金利上昇や景気変動)が来たとき、船長が「どうしよう」とパニックになっていては、乗組員(社員)も不安になります。
逆に、船長が「備えはしてあるから大丈夫だ」とどっしり構えていれば、船全体が安定します。
「一番安い選択」が、常に「最善の選択」とは限りません。
あなたが今夜、枕を高くして眠れる選択はどちらでしょうか?
今回ご紹介した「制度融資」への借り換えシミュレーションや、申請サポートも当事務所で承っております。
「自社の場合は、文京区の制度と東京都の制度、どちらが得か?」と迷われたら、
ぜひ一度当事務所にお越しください。
数字と心、両面からベストな答えを一緒に探しましょう。


