「継ぐ・継がない」のその先へ。年末年始、家族と話したい“会社の未来”のこと
こんにちは、公認会計士の塙 健一郎です。
師走に入り、文京区の街路樹もすっかり冬の装いになりました。
事務所のある本郷界隈でも、あちらこちらでクリスマスのイルミネーションが見られ、なんだか心が温かくなる季節です。
さて、もうすぐ年末年始。
久しぶりにご家族やお子様と、ゆっくり顔を合わせるという経営者様も多いのではないでしょうか。
普段は忙しくて、なかなか深い話ができない親子だからこそ、お正月は貴重なチャンスです。
今回は、小難しい税金や数字の話は一切抜きにして、「親子の対話」と「心のバトンタッチ」について、コーチングの視点からお話しさせてください。
■いきなり「結論」を求めていませんか?
「正月に息子が帰ってくるけど、会社のことを切り出しにくいなあ…」 そんなふうに悩んでいる経営者様はいらっしゃいませんか?
経営者としての責任感から、つい 「お前、会社を継ぐ気はあるのか? イエスかノーか教えてくれ」 と、詰め寄ってしまう……。
お気持ちは痛いほど分かりますが、これでは相手も身構えてしまいますよね。
コーチングの世界では、信頼関係を築くためには「相手の地図(見ている世界)を知ること」が大切だとされています。
まずは結論を急がず、相手が今、何を大切にしているのかを知ることから始めてみませんか。
■家族会議で使いたい「魔法の問いかけ」
今年の年末は、こたつで蜜柑でも食べながら、こんなふうに聞いてみてはいかがでしょうか。
- 「お父さんが創業した頃、どんな想いでこの会社を作ったか、話したことあったかな?」
- 「外から見ていて、うちの会社の『良いところ』ってどこだと思う?」
- 「お前の人生で、一番大切にしたい夢は何?」
これらは「オープン・クエスチョン」といって、自由に答えを引き出す質問です。
「継がせる」ための説得ではなく、お互いの人生の「価値観」を共有する。
そんな対話の時間こそが、円滑な事業承継の第一歩です。
■「継がない」と言われたら、それは「新しい選択」の始まり
もし話し合いの結果、お子さんが「自分の道を歩みたい」と言ったとしても、決してガッカリしないでください。
それは「会社の終わり」ではなく、「新しい承継の形」を探すスタートラインです。
事業承継のゴールは、必ずしも「親族に継がせること」だけではありません。
- 従業員承継: 長年苦楽を共にした信頼できる社員にバトンを渡す
- M&A(第三者承継): 意欲ある他の企業や、若い起業家に託す
特に最近は、「会社を存続させ、雇用や取引先を守る」ための前向きな手段として、M&Aを選ぶ中小企業が増えています。
親族外への承継も、立派な「経営者の卒業制作」です。
まずは家族で腹を割って話し合い、親族内承継が難しいのであれば、早めに次の選択肢へ舵を切る。
それが、会社を長く存続させるための重要な戦略なのかもしれませんね。
【編集後記】
私がワークショップで行っている「レゴ®シリアスプレイ®」では、
言葉にしにくいモヤモヤした想いを、ブロックの作品に託して表現します。
事業承継も同じです。
「感謝」「期待」「不安」……言葉だけでは伝えきれない想いが、親と子の間にはたくさんあるはずです。
数字や契約書の実務は、私たち専門家が後からいくらでも整えることができます。
まずは、この年末年始に「想い」の部分だけ、少し共有してみてはいかがでしょうか。
もし、「どうやって話を切り出せばいいか分からない」「第三者の視点を入れて整理したい」ということがあれば、いつでもお声がけください。
皆様の家族会議を温かくサポートさせていただきます。

